その6:コトバの変遷

執筆者:関根幸雄(広島修道大学教授)

貿易実務英語も時代に合わせて訳し方が変化するのじゃよ!

日常的な日本語のコトバでは、筆からボールペンに代わっても筆箱、下駄からクツに代わっても下駄箱、一両小判がなくなっても両替など、 時代が変化しても未だに使われているコトバがあります。

英語のコトバでは、馬から車に代わってもdriveが使われていますし、pilotも船の水先案内人の意味であったものが飛行機の操縦士として用いられています。

貿易実務英語では、どのような変遷がみられるのでしょうか。

国際商業会議所(ICC)が制定したIncoterms(インコタームズ)があります。 これは、International Rules for the Interpretation of Trade Terms(貿易条件の解釈に関する国際規則)の略称で、専門書にはInternationalのIn、Commerceのco、あとにtermsを組み合わせたものであると解説されております。

ところが、近年のICC出版物ではInternational Commercial Terms の略語であると説明しており、意味するところが変わってきたようです。

今日、悩ましいのはShipping Documentsではないでしょうか。

専門書では「船積書類」と表記されており、輸送手段が船であった時代はそれでよかったのですが、その後航空貨物が登場してきました。その場合でもShipping Documentsが使われており、航空貨物であるのに「船積書類」とは言えなくなります。

研究者の中には「出荷書類」と表記する方もおりますが、インターネット上を検索した限りでは、「シッピングドキュメント」とカタカナ表記で使われている模様です。同様に、shipmentも船積(品)や積荷の意味のほかに、航空貨物の場合、出荷(品)や発送(品)となります。